Development of electrode materials for realizing innovative storage batteries:
When carrier ions are inserted and extracted, a phase transition occurs with significant strain, and therefore we have to develop new electrode materials with robust structures that can be stably used even in such a situation, and we also aim to construct a new battery system itself.
By controlling microstructures of oxides and alloys at the atomic structure level and further controlling mesoscale microstructure formation, we aim to change the thermodynamic potential and facilitate diffusion of carrier ions.

新規蓄電池実現のための電極材料開発
キャリアイオンが挿入・脱離すると,新しい相に相転移し歪も生じますが,そのような状況においても安定的に使用できる構造を有する材料開発に取り組みます.また,新たな電池系構築を目指します.スピネル酸化物や層状岩塩構造などを構造レベルで制御し,メゾスケール組織形成制御をすることにより,キャリアイオンの脱離挿入電位を変化させたり,拡散を容易にさせたりすることを目指します.

1. 新規マグネシウム蓄電池の開発
我々は,ポストリチウムイオン電池の一つの候補として,2006年頃からマグネシウム蓄電池の可能性について研究を開始しました.その正極材料候補としてMgCo2O4の合成および評価を行っています.MgCo2O4はスピネル型の結晶構造を持つ酸化物です.高温では熱分解してしまうため,セラミックスの一般的な合成法である固相反応法では合成が難しく,水溶液中での湿式プロセスを用いて合成します.正極材料としては電子伝導性およびイオン伝導性などが必要なため,作製した試料に対し電気抵抗特性の測定を行っています.現在は,種々の活物質の探査および正極開発,負極開発,電解液開発を総合的に俯瞰的に行っております.

2. ロッキングチェア型 Li-Mg 二塩蓄電池の開発
マグネシウム蓄電池開発における難所の一つは,マグネシウムイオンの脱挿入を可能にする正極材料の探査でありますが,逆に,マグネシウム電析は極めてスムーズな電析形態を示すことが利点であります.一方,リチウム(イオン)電池では正極については問題ないですが,リチウム電析形態がデンドライト形状になることが致命的な問題であります.そこで,正極反応にはリチウムイオン,負極反応にはマグネシウムイオンに半電池反応を担わせるとどういうことが起こるのか?という着想に至りました.さらに,我々は多価金属を利用した蓄電池の実現のために,古典的なダニエル電池を基礎とした新しい概念の蓄電池,すなわち複数の塩を溶解させた電解液を用いた蓄電池を考案し,試作と評価を先駆けて行いました.

3. リチウムイオン電池用負極材料
近年,有用な二次電池としてリチウムイオン電池がモバイル機器等に用いられていますが,現在その負極に採用されている炭素系材料は容量の限界に近づいており,さらなる性能の飛躍を求めてスズ系の材料が注目を集めています.スズ系材料は炭素系のものに比べてリチウム容量が数倍も大きいため,実用化されればリチウムイオン電池のさらなる高容量化が期待できます.しかし実用化のためには充放電に伴う電極劣化により寿命が短くなってしまうなどの重大な欠点の克服が課題となります.本研究ではスズ単体の電極を用いた電池を組み充放電試験を行うことで,電極劣化メカニズムなど充放電に伴う挙動の解明を試みます.その中でひとつの性質として充放電に伴うスズ負極の大きな体積変化が試験電池の起電力に影響をもたらすことが明らかになってきました.これは体積変化に伴う歪エネルギーの影響だと考え,得られた考察を元にし,更なる特性を持つスズ系のリチウムイオン電池負極新材料を考案していきます.

雑誌「化学」における解説記事:
リチウムやマグネシウムなどのキャリアイオンが挿入された際には大きな歪を生じます.Journal of Materials Chemistry 21, 2701-2708 (2011)に掲載された「歪の影響がどのように電極電位や組織形成に及ぼすか?」について要点を簡潔にを説明し,Nature Communications 11, 1584 (2020)に掲載されたアルミニウムにおけるリチウム侵入時における歪解放機構をわかりやすく解説した記事です.短いページではありますが,エッセンスをコンパクトにまとめているつもりです.記事はPDFを購入して誰でも読めるようにしていますので,興味のある方は下記をご覧ください.

雑誌「化学」における解説記事 PDF